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少女達とボート:10K

 '97年盛夏。四国は愛媛県今治市近郊でロケが始まった。集まった5人の少女達は親元を長く 離れるのも皆初めてである。合宿生活の開始と共に早朝からボートの特訓、午後はリハーサルと いう日々が始まった。ボートは舵手1人、漕手4人のナックル。今治漕艇協会の井手先生(世界 選手権出場経験あり)の指導のもと現役高校ボート部員の協力を得ての練習である。ベテラン指 導者の読みでスケジュールをたてていたものの、始まって数日はこんな様子で撮影に間に合うか、 という有様(この雰囲気は劇中の彼女達の様に良く生かされた)。
 手にマメを作り、筋肉痛で動きもぎこちない、少しの休憩時間には水揚げされた魚の如くであ る。カッコつけて様子をうかがってなんていられない・・・まったく運動部の夏合宿であった。
 それから、2ヶ月。撮影の進行と共にボート練習は続けられた。自力でボートを動かせるよう になってからは、ボートの上に5人だけ、ということも度々ある。きついことを言ったり、励ま し合ったり、それぞれの個性が出て役割分担が自然と決まっていった。彼女たちもこの映画を撮 り進みながら、新しい仲間を得、忘れがたい青春の時を刻んでいった。


艇庫:10K

 今治市の隣、大西町に鴨池という入り江がある。わかりにくい場所にあるため、地元でも限ら れた人しかやってこない。鏡のように凪ぐ海面、淡く見える島影、と瀬戸内海らしい風情の、絶 好のロケ地である。ここに、木造本建築、総二階建ての艇庫を建設した。
 モデルとなったのは小説の舞台である松山東高の艇庫。旧制中学の名残を残す年季の入った建 物の、多くの部分を再現した。
 国立公園内ということもあり、建設にあたっては仮設とは言えど、数々の煩雑な手続きを踏ま なくてはならない。地主さんの無償提供を始め手続きの一切が町の協力で為された。そのまま残 したら格好の海辺の施設であったが、20年後の現在では廃虚と化している、というシナリオ上、 クランクアップ近くにはさらに丹念な加工が加えられ、ブルドーザーによる取り壊し場面(これ は残念ながら編集でカットされた)の撮影も行われた。短い間だったが自分たちの部室のように なっていた艇庫に一撃が加えられる様子にスタッフ・キャストとも心の中で声を上げていた。


ボートレース:10K

 レースの場面は、やはり今治に隣接する玉川町玉川ダムで撮影された。
 この撮影には予想以上の難しさがあった。この作品のロケ自体、「自然」が相手で、刻々と変 化する天気にも振り回されたが、ロケ期間中にあった台風の到来で、湖面の水位が増し、青々し た水が茶色く濁ってしまい、何とか撮れる状況になるまで思いの外、日数を要した。
 カメラは、このために作られた特製の撮影艇に乗ったが、被写体との的確な距離を維持したり、 何度も繰り返されるテストの度に元のポジションに付くだけでもかなり大変である。録音チーム や美術チーム、それぞれが分散して各自のボートに乗っているので、連携を取るにも陸の上とは 勝手が違う。トイレと昼食以外には一日湖上、という日が何日も続き、後半には、五人娘達の艇 の方が、かなり巧みに段取りに貢献してくれるようになった。その成果がどれほどであったかは、 クライマックスのレースシーンで、観ていただけると思う。湖を囲む木立が少し色づき始めた10 月初旬、クランクアップ。


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