『記憶』
と言えば、よく映画でも取り上げられるテーマだけれど、私の映画でも大きなモチーフで、『船を降りたら彼女の島』では『鶴姫の鈴』と『三ツ首さん』がそれである。人の『記憶』というのはちゃんと覚えている事より、忘れてしまっていると思い込んでいる無意識の『記憶』の方がずっと沢山あって、その方がもしかして大切なものかもしれないと私は思っている。それは例えば、ある音だったり、光の明暗や、香り、味覚と言ったものかも知れない。主人公、久里子は『鶴姫の鈴』の存在は忘れていても、その音色は覚えている。私は『追憶』の映画が撮りたかった訳ではなく、『記憶』の映画が撮りたかった。 |