がんば会の和田曜章さんからレポートが届きました!!
いつもありがとうございます!

今年も9月17日(金)〜10月3日(日)まで開催の「松山映画祭」。
そのオープニングイベントとして、映画「瞬(またたき)」の特別上映と、
磯村一路監督および原作者・河原れんさんによるティーチインが開催されました。

数年ぶりの松山で、昨晩は楽しい宴席を持ったという磯村監督。
そして初めての松山の印象を尋ねられて、「空港から近い!」と素直な感想を披露された河原さん。
それぞれのユニークな挨拶で、ティーチインの幕が開きました。

司会の方に問われる形で原作者あるいは小説家ならではの視点を語る河原さんは、
今回の「瞬」もあえて純粋な恋愛一筋の話を書こうと思ったわけではなく、
書きたいと思うものを書いたら、このような小説になったそうです。
場合によっては物語の最初から最後まで、ストーリーが降ってくるようなこともあるのだとか。
「瞬」ではごく普通の人物として、主人公のふたりを書いたのだそうですが、
映画になって北川景子さん、岡田将生くんによって具現化された姿を観た際には、
美しすぎてびっくりしたそうです。
かつて「余命」という映画では脚本も手がけられた河原さんは、「脚本を書く」
ことと「小説を書く」こととの違いを、次のように述べられました。
脚本は客観的に、コマを動かすように人物を動かし、キャラクターの心情には
深入りせず、映像化のための設計図に徹する・・・対して小説はひとりひとりの
キャラクターの心情に入り込んで、主観的に描写する、と。
両方の経験を得たことが、ご自身の力になっているそうです。

一方の磯村監督は、以前の「ひめじ国際短編映画祭」でも披露された、
映画監督になったきっかけや、原作を現実に映画化する場合の実務的方法論、
主演のおふたりの俳優さんの特質や撮影時のエピソードなどを紹介されました。

このティーチインで特筆すべきことは、原作サイドからの視点だけでなく、
また映画監督サイドからの視点だけでもなく、原作と映画の融合、あるいは原作者と
映画監督の言わばセッションについても多くの言及があったことでしょう。

磯村監督は小説を映画化する場合に、自分が好きだと思える小説でなければ
手を染めない
とおっしゃっていました。
たとえ原作どおりに撮ったとしても、原作ファンが差異を訴えたり、
がっかりしたりすることがある・・・それほど小説の映画化は難しいものであり、
仮に自分好みに変更やアレンジをしたとしても、原作の良さが失われてしまう。
だからこそ自分がこれを映画にしたいと思うものをこそ手がけるのであり、
多くの映画監督は皆、そう思っているはずだと語られました。

「瞬」に関しては、磯村監督がその文庫本の解説で述べられているように、
まさに「好き」な小説だったのです。
対する河原さんも磯村作品特有の、透明感やかすみがかった白っぽい映像の雰
囲気
を作品に活かしていただければ・・・と期待されていたそうです。

このご両名の最大のセッション・・・いわゆる共鳴箇所は、
やはりクライマックスのシーンにあったと言えるでしょう。

上映後の舞台挨拶でしたので、実際のティーチインではかなり具体的なコメントが
あったのですが、映画を未見の方のために少しオブラートに包んだ形で、
そのエピソードをご紹介します。

クライマックスにはある種刺激的な、しかしふたりの主人公にとって重要な展開があるのですが、
刺激的ゆえに、監督に全幅の信頼を置いていた河原さんも、
はたして監督はこれを原作のままに撮られるのだろうか、と考えられていたそうです。
実際、シナリオ化に際してその描写の度合いを指摘する意見もスタッフからあったそうですから。
しかし監督はそんな河原さんに、「あそこは絶対に撮るよ」ときっぱりおっしゃられたと・・・。

河原さんにとっても思い入れのあるクライマックスだったのですが、監督もまた、
あれがあってこそ、彼の命を必死につなぎとめようとする彼女の行為の崇高さが描けると思われたそうです。
偶然にも、おふたりがこのシーンのイメージとして共に想起されたのが、
ケネディ大統領夫人であったジャクリーンのとったある行動だったというのも、
印象深いエピソードでした。

ティーチインでは質問コーナーも設けられており、客席からは「北川景子さんの印象」
「瞬というタイトルの由来」といったものから、「総合芸術としての映画における芸術性と職人性」など、
多岐に渡る質問が寄せられました。
ユニークだったのは「エンドロールに河原れんさんのお名前がありましたが、
どこに出られていたのですか?」
という質問。
原作者を出演させるのが磯村監督のご趣味らしく、「解夏」のさだまさしさん
以外はすべて出ていただいたのだとか。
監督からはヒントだけが提示され、DVDで確認してみてくださいと、
観客に向けて挑戦状(?)が出されたのでした・・・ヒントは「法律事務所の受付」だそうです・・・。

また「監督には女流作家が原作の映画が多いようですが?」という質問には、
監督ご自身、指摘されて初めてお気づきになられたそうで、
女性の視点が支えになっているのかも知れない、とおっしゃっていました。

最後に観客へのメッセージとして河原さんからは次回作の小説に関しての紹介が、
また磯村監督からはこれまで2本の映画を生み出したこの愛媛の地から、
機会があればもう1本を・・・という「愛媛3部作」についての想いが披露されました。
特に最近、「がんばっていきまっしょい」に出演されたあの女子ボート部の女優さんたちと
会う機会が少なくなく、「がんばっていきまっしょい」の続編を、という話題が出るのだそうです。

それを撮るならばやはり愛媛だろう、と監督の熱い抱負・・・
あえてもっと強く表現させてもらえるならば、<パート2宣言>でもって、
この豊かなるティーチインはお開きとなったのでした。

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