こんにちは。DVDディレクターの伊尾喜です。
 ビデオ版のレンタルもスタート、DVDの発売まであと10日を切りました!
 いろんなところでこのDVDが話題になっており、本当にうれしい限りです!矢口監 督以下スタッフ一同、皆さんに早くDVDを観ていただきたくて・・・何かこう・・・ 胸が・・・ムカムカ・・・。
 
 
 さて今回からは、お約束どおりDVDのメイキングについてお話したいと思います。
まずは、何よりもいちばん皆さんが楽しみにして下さっているであろう、映画の本編についてです。

●2枚組となったのは・・・
 前回までにお話したように、とにかく特典満載!の本DVD。でも、何よりも大切なコンテンツは、映画本編に他なりません。今回のDVDを2枚組としたのも、実はこの理由からなのです。
 「ウォーターボーイズ」を映画館でご覧になった皆さんは、シンクロシーンのプールの青さ、ボーイズたちのたくましい褐色の肌、竹中さんの派手なアロハ、玉木君のアフロ炎上などなど、いろんな映像を心に刻み込まれていることと思います。
 我々スタッフは、劇場で観たままの、できればそれ以上のクオリティでDVD化したいと考えました。しかし、それと同時に、メイキングをはじめとするたくさんの特典映像もあわせて楽しんでいただきたいとも思っていました。
 そこで僕たちが出した結論が、「2枚組」でした。
 1枚目は本編ディスクとして、映像・音声とも最高のクオリティを目指す。
 2枚目は特典ディスクとして、お腹いっぱい「ウォーターボーイズ」文化祭を楽しんでいただく。
 こんな流れで、DVDの制作がスタートしたんですね。

●さて、いちばん大事な映画本編について。
 DVDに使用された「ウォーターボーイズ」のマスターテープは、「HDテレシネ」という作業で作られたものです。これは、BSデジタル放送などで使われている、ハイビジョン放送のクオリティで、従来のテレビ映像の4倍の細やかさで映像を収録することができる方式です。
 その映像は、とにかく「綺麗!」のひとことに尽きます。映像の細かさ、色のあざやかさなどなど、もとのフィルムの映像そのまま!と言い切ってしまっても良いでし ょう!
 さらにDVDでは、エンディングの映像を、デジタルデータをダイレクトに収録した ものと差し替えてあります。
 エンディングの映像は、気泡のCGアニメを背景に、写真と文字をコンピュータ上で合成して作られたものでした。
 映画ではこのデジタルデータをフィルムに書き込んだものを上映したわけですが、 DVDではこのデジタルデータをそのまま収録することで、劇場で上映されたものよりも、写真をよりハッキリ、文字をよりクッキリさせた映像になっているんですね。
こちらが、ビデオバージョン。 ビデオカセット用のD2マスターテープからキャプチャした映像です。
 
 
そしてこちらが、DVDバージョン。 DVDからキャプチャした映像です。
 
 
  ちなみに、映画館で上映されたものと内容が違うわけではありませんので、ご安心 ください!

●映画をDVDという「お皿」に盛り付けるために。
 さて今度は、このマスターテープをDVDに収録するために、「エンコード」という 作業が必要になります。これは映像と音声をデジタル化する作業のことで、DVDの画 質・音質が決まってくる大変重要なステップなのです。
 ではここで、シンクロディスクのエンコードとオーサリング(映画本編の映像、3つの音声、2つの字幕などを、メニュー画面から呼び出すためのプログラミング作 業)を担当していただいた、メモリーテック社の安藤とき枝さんにご登場いただき、 この工程についてくわしくお話をうかがってみます。

伊尾喜:「ウォーターボーイズ」のDVDは、ディスク2枚に約250分の動画を収録していますよね。これを1枚に入れることって、技術的には可能なんでしょうか?

安藤:はい、技術的にはできちゃうんですけど・・・そうすると、大量の映像と音声をぎゅーぎゅーに詰め込むことになってしまいますよね。

伊尾喜:ぎゅーぎゅーに詰め込むと、いったいどうなっちゃうんですか?

安藤:ラッシュ時の満員電車に乗ったとしましょう。自分のカバンは思いっきりつぶれ、見知らぬ人たちが四方八方からぎゅーぎゅーに自分のカラダを締め付けてきますよね。

伊尾喜:ああ、わかります!あれはツライですよね・・・満員電車で通勤・通学の皆 さん、本当に毎朝お疲れ様です m(_ _)m

安藤:は、はぁ・・・ともかく、外から見ると誰が誰だかわからないほどに「圧縮」されてしまい、とてもとても朝から元気にがんばろう、という状況ではありませんよね。
 映像や音声も一緒なんです。ぎゅーぎゅーに詰め込んでしまうと、フィルムに記録された映像が、本来持っている色合いやソ感を、元気に表現できなくなってしまうんですね。

伊尾喜:VHSの標準と3倍みたいな感じなんですか?

安藤:そうそう、それがわかりやすいですね。3倍モードは標準モードの3倍の長さを収録できますが、画質は輪郭がぼやけていたり、色がなんだかのっぺりしていたりと、かなり見た目の差が出てしまいますよね。

伊尾喜:確かにそうですねー。DVDにも同じことが言えるわけですか?

安藤:そうなんですよ。一枚のDVDにあまりに多くの映像・音声を詰め込もうとすると、微妙に色の数を減らすなどして、データを身軽にしてあげなければいけません。 そうすると、どうしても画質や音質に影響が出てしまいます。

伊尾喜:そのあたりが、安藤さんが苦労されていたところ?

安藤:そうなんですよ。もともとの映像を再現するために、エンコードのマシン選び からワンシーンワンシーンの映像のマニュアル調整まで、とにかくできる事をいろいろ試しました。
 細かい話は省きますが、シンクロや水まわりの映像はあまりにも動きが激しいために、なかなかエンコード作業がうまくいかなかったんですね。結局は実行しませんでしたが、映像マスターに手を加える事まで考えたりもして・・・スタッフの方々に多大な迷惑をかけました。すいません。

伊尾喜:追い込みの時期には、何度か泊りこみで作業されていたようですが・・・

安藤:はっきり覚えてないんですけど・・・月曜出勤して水曜退勤したりとか・・・ 臭そうですよね、臭いんです(T_T)

伊尾喜:・・・うら若き女性がそんなことを・・・(-_-;)

安藤:いえいえ。でもですね、プレビューのときに矢口監督からOKをいただいたときには、もー、本当にうれしかったです!今でもうれしいんですけど(笑)。「けっこんしてください・・・」by静子、みたいな気分でした。
 とにかく、多くの人に支えられて出来た作品です。一人では出来なかったです。皆さん本当にありがとうございました。

伊尾喜:こちらこそ、本当にお疲れ様でした!

●つづくのです。

 というわけで、「ウォーターボーイズ」本編映像に対するコダワリについて、今回はお話しました。できるかぎり、一般の方々にもわかりやすい表現で書いてみたつもりですが、いかがでしたでしょうか。

 次回はもーっとテンポをあげて、シンクロディスクの「音」と「字幕」についてお話したいと思います。
 では、また (^^)/~~~
 
 
  
 
 
 
 
製作 フジテレビジョン・アルタミラピクチャーズ・東宝・電通
監督/脚本 矢口史靖

(C)2001フジテレビジョン/アルタミラピクチャーズ/東宝/電通