がんば会の和田曜章さんから、
11月28日(日)に開催された「第4回京都造形芸術大学映画祭」の
レポートを送って頂きました。
和田曜章さん、いつもありがとうございます!

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11月27日(土)・28日(日)に開催された「第4回京都造形芸術大学映画祭」。
その28日(日)のプログラム「トークバトル勃発!”映画のプロ × 学生監督 “」
のパネリストとして、また「京都造形芸術大学アカデミー賞授賞式」の
プレゼンテーターとして、桝井省志プロデューサーがゲスト参加しました。

当日は最優秀作品賞の候補としてノミネートされている、
作品賞部門受賞の4作品(いずれも各大学の映画関係学部学生による作品)が
まず上映されました。
ノミネートされた4作品は以下のとおりです。

 「大好きなあやみちゃん」(監督:金子智明)
 「あんたの家」(監督:山川公平)
 「QULOCO」(監督:柴田有麿)
 「APE」(監督:西中拓史)

上映後には作品賞、俳優賞、技術賞、監督賞・脚本賞、特別賞の授賞式が行われ、
他のトークバトル・パネリストと部門ごとに分担する形で、
桝井プロデューサーが作品賞および監督賞・脚本賞の
プレゼンテーターを務めました。

その後、上述の各賞を受賞した学生スタッフ・キャストが学生側として参加し、
「トークバトル勃発!” 映画のプロ × 学生監督 “」が開催されました。
プロ側のパネリストは、同様に先ほどの授賞式でプレゼンテーターを
務められた4名の映画人の方でした。

 桝井省志(映画プロデューサー/アルタミラピクチャーズ)
 孫家邦(映画プロデューサー/リトルモア)
 北條誠人(ユーロスペース支配人)
 有吉司(映画配給/マジックアワー、京都造形芸術大学非常勤講師)

 
バトルと言うだけに開始早々から、北條氏の「ユーロスペースには、
今日上映された4作品は必要ない」との言葉が飛び出し、
トークはいきなり熱を帯びてまいりました。
 
もっともこれは、ユーロスペースで上映したい作品は完成の一歩手前と
言うべき、次回作を観たくなる監督の映画であって、
今回の作品群は「完成されすぎている」という意味だったのですが・・・。
 
ただこの一言が象徴的だったように、トークバトルはタフなベテラン映画
人が若い作り手たちを、期待を込めつつ叱咤激励するという流れで
終始展開していました。

話は映画業界の近況に及び、若い作り手たちから
「いまシネコンでかかっている映画はマンガ原作のようなものだらけ。
そんな作品ばかりだから映画館で映画を観ようとする人たちが減ってしまい、
結果として映画を観る目が劣化しているのではないか」と、
自分たちの将来の進路も見据えた不安が提示されました。
 
ただ、そういう彼らもまた、「映画館に足を運ぶのは、
フランクに行けないイメージがある」「お金や時間がない」
「観たいと思う予告編に出会わない」などの理由を挙げて、
映画館で映画を観ていないことが明らかになった際のパネリスト、
孫氏や有吉氏の喝は熱がありました。
 
まずは映画を観ようという気持ちが私たちの世代より少ないんじゃないか、
一見自分の人生とは何も関係ないような作品ですら、
思わぬものにぶち当たる可能性もある、
君たちは映画館に足を運んでいないから映画を発見できていないのではないかと。
 
と同時に、映画とはコミュニケーションツールであって、
それを観て皆ですごかったなあ、全然ダメだなあと語り合うこと・・・
時にはそれで大ゲンカになることはあるものの、
そうやって観て語り合うことが本当に楽しいものなのだ・・・・と。
 肉食系と草食系という喩えが適当かどうかわかりませんが、
まさにそのような、世代のパワフルさの違いが印象的でした。

桝井プロデューサーはこのトークバトルで、
そのような熱い発言ではなく、
実に自然体に自論を展開していたのが際立っていました。
その発言をいくつか拾ってみましょう。

「今日パネリストが4人いらっしゃるうちの私は作り手の立場でして、
北條さんのような劇場が映画を上映してくれないと、やっていけないわけです。
そんな劇場側の厳しい目を潜り抜けて上映しているのですが、
ただ観客のことは正直なところ、わからない・・・
出資者に対してはもちろん観客のことをもっともらしくわかったようなことを言いますが(笑)、
その実、自分の作りたいものを作る・・・そんな気持ちで映画を作っていますね」

「大映に就職した当初は、何でこんな映画を作るのだろう・・・と
会社の姿勢に不満を持ったこともありますが、
その頃、井筒和幸監督の「ガキ帝国」など新しい映画が出てきて、
それに勇気づけられました。
皆さんは今のメジャーの映画の作り方に不満があるかも知れませんが、
それぞれの立場で関わっている人たちが何らかの理由があってそうしているわけで、
他人のやっていることを気にしなくていいんじゃないですか。
でないと映画をやろうという気持ちがなくなりますよ」

「映画の定義はいろいろありますけども、
映画館でかかっているのが映画だと思います。
私は誰も観ないような(笑)ドキュメンタリーも作っていますけど、
これも35ミリフィルムで作っているんです。
そういう我々の作品にしても、『踊る大捜査線』のような作品にしても、
客が入ってナンボというところでは同じ商売ですから、フェアなビジネスなんです。
昨日こちらで上映された「SR サイタマノラッパー」のような作品が
いきなりシネコンにかかるようなことだってあります。
だからあまり被害者意識を持つのではなく、そういうフィールドで打ち勝っていく・・・
そんな気持ちで臨んで欲しいですね。
理不尽で許されないと思うことも多い業界ですが、
フェアで実力のある者が評価される、チャンスのある世界ですから」

「映画業界は厳しいですが、最低な状況で入ったのなら
もうそれ以下の最低はないんですね。不景気であればこそ、
誰も映画業界に入って来ようとしないわけで・・・
だからチャンスだと思ってがんばってください」

時に自然体過ぎて、司会でもあり女優でもある大西礼芳さん
(映画祭実行委員長にして京都造形芸術大学映画学科俳優コース2回生)が思わず、
「ほ、本当にそれでいいんですか?」とツッコむ一幕もありましたが、
まさに慧眼と言いますか、穏やかな口調とお話の中に、
経験に裏打ちされた独特の見識が光る<桝井節>が爽快なひとときでした。

最後に最優秀作品賞として「APE」が選出され、
桝井プロデューサーがそのプレゼンテーターを務めるとともに、
ラストの決着のつけ方にやや問題が残るものの、
作品として完成度の高いものであったと講評され、
映画祭を締めくくられ、映画祭は盛況のうちに終了いたしました。