【ティーチイン・2/4】

荒木:はい、じゃあ、どうぞ続けてください。そちらの女性にマイクを回してください。
J(女性):どうも、こんばんは。主演の妻夫木クンがとても可愛かったんですけど、監督から見て、彼はどんな感じの俳優だと思われますか?
矢口:はい、あのー、とっても可愛いヤツだと思います。可愛い、…そうなんですよ。実際、すました顔してるとカッコイイんですが、「クシャクシャッとしてみて」と言うと、あんなになっちゃうワケです。だから、上手な男優さんだったら、「やってみて」と言ったら、テクニックでやれると思うんですけど、彼はちょっと、それとは違うみたいで。たぶん彼の中に持ってるんでしょうね。二枚目の部分と三枚目の部分が地に染み付いてしまっているんで、すっかりその魅力が映画に出ていると思います。えー、ずっと妻夫木君ファンだった人が見たら、がっかりしたりしたらゴメンナサイ。だけど、ああいう部分がありますんで、これからも応援してあげてくださいね。
J:ありがとうございました。
 
荒木:では、そちらの女性にマイクを回してもらいましょうか?矢口さんの上映の際は、本当にいつも女性客が多いんですが、今日は男女半々で、超いい感じですね。
矢口:なんででしょうね。そんなに男の裸を見たい男が…。(笑い)
K(女性):こんばんは(照れ)。
矢口:はい、こんばんは。
K:矢口監督の、すごく大ファンで(照れ)。
矢口:ありがとうございます。
K:今回、ちょっと話させていただきたいんですけど(照れ)。
矢口:照れてるのは、あなた一人だけですよ。【笑】
K:今日の『ウォーターボーイズ』もすごくおもしろくって、なんか若々しくって、すごく。なんか最近映画観てなくって、映画好きなんですけど、今日は、「これは!」っていう映画で本当によかったんですけど、矢口監督の『ひみつの花園』が大好きで、今まで20回、30回って観てるんですけど。
矢口:いやー、そんなに観なくていいですよ。【笑】
K:アハハ。今回西田尚美さんもおいでになっていて、すごくうれしいんですけど、西田尚美さん、『ひみつの花園』の中ですごくナチュラルで、いつも、あれが地なのかなっっていうぐらい、そうやって感じているんですけど、監督はお友達って言っているので、ふだんは西田尚美さんはどういう方なのかお聞きしたいんですけど。
矢口:えーっと、長い質問で。でも、西田尚美さんがどういう人かを知りたいんですよね。
K:映画撮ってるあいだとか、何かエピソード、ありますか?
矢口:エピソードですか。うーん、えーと、あのまんまですよ、彼女は。あれ、どこ行っちゃったんだろう、彼女は。…ああ、いた。あの、素晴らしい女性で(笑)。まあ、よく言えば自然体な演技と、悪く言うとなんかいい加減という感じで、そこが魅力ですね。『ONE PIECE』なんかも、ちょっと出てもらったりして、ボディビルダーの役をやってもらって、それもちょっとおかしいので、よかったら観てください。ですが、友達とは言いますが、たまにしか会ってくれなくてですね。『ナビィの恋』っていう映画があったんですね、中江監督の。それを観たら『ひみつの花園』よりすごく可愛く見えまして、僕としては恋人を取られたようなすごいつらい思いをしまして、こんちくしょうと思いました。ですけど、日々日々、そうやって作品を積み重ねるたびにどんどんよくなっていますので、この悔しい思いもしょうがないなと思いまして、どんどん成長してもらいたいと思います。(西田さんに)「言って言って」って感じですか?…(Kさんに)え?こういうんじゃだめですか?
K:ありがとうございました。
 
荒木:はい、どうぞ、あちらの男性に。
L(男性):こんばんは。あの、劇中で出てきたあのアフロの人いますよね。あの人のエピソードだけでも、すごい笑えておなかいっぱいになったんですけど、最後にフィンガー5の歌が出てきましたよね。それで、なんか、関係性があるのかなと、勝手に想像したんですが。
矢口:フィンガー5の中にアフロの人、いたっけ?…いた?
L:いや、俺の中の意識では。
矢口:えーと、お年を召した方は…。あ、「いない」と言ってます。
L:でも、あのアフロの人が俺の中では主役っぽい感じだったんですけど、監督の中ではあれはどんどんおもしろく書けたものなんですか?
矢口:えーとね、まあ、ほとんど主役。二巨頭ですよ。鈴木とアフロの佐藤というあの二人のお話ですけれどもね。ですけど、こんなにおもしろくなっちゃうとは思いませんでした。玉木君という役者さんで、『がんばっていきまっしょい』を作った磯村監督の、いま撮影中の作品にも結構いい役で出ていまして、注目株ですよ。おもしろいヤツなんで、応援してください。
 
荒木:はい、どうぞ、続けてください。その真ん中にいる方に回してください。
M(女性):ええと、私もすごい、矢口監督の作品が好きで、今日はすごい楽しんで観れました。
矢口:ありがとうございます。
M:先が読めるストーリーでこんなに楽しめる監督なのかと。【笑】質問なんですけど、ちょっとキャストの話が続いちゃっているんですけど、蛭子さんとか、谷啓さんとか、有名なというか、なじみの方々が結構出演されているんですけども、キャスティングする上での思い入れのある方とか、演出した時のエピソードとか、もしありましたら聞かせていただけませんか。
矢口:はい。えーと、竹中さんは、最初から入れたいなと思っていたんです。と言うのも、テレビで僕『学校の怪談』っていうシリーズを演出してまして、3作品ほど竹中さんといっしょにさせてもらったんですよ。その時にとても息が合ってしまいまして、こんなに楽しくやってもらえるんならと思いまして、本を書く段階から、うすうす出てもらいたい役なんかも決めてあったりして、イルカ調教師になりました。あと、鈴木砂羽さん(Aに目配せ)、…ね(笑)、浜松出身の。【笑】彼女も僕、大好きな役者さんで、彼女も僕が1作目に撮った『裸足のピクニック』という作品でも実は出てもらっていまして、砂羽ちゃんのデビュー前なんですよ。ですから、あの当時はまだ素人さんで出てもらったんですけどそれ以来のお付き合いで、たまにしか会ってもらえないんですけど今回出てもらいました。あとは、だれかなー。えーとね、じつは個人的に好きな役者さんが、今回初めて会ったんですけど、桜木女子高校文化祭実行委員の3人というのがいまして、この人たちの演出は燃えましたね。「崩してよ」って言うと、いくらでも崩れていく3人なんですね。一番しゃべっていた実行委員長は、秋定さんですね。それからのっぽの人がドシと書いて土師(はじ)さんですね。もう一人、ちっちゃい子が上野未来(みく)ちゃんといいまして、彼女はなんか最近、東京タワーの上でファイブミニを持って叫んだりして、CMなんかにも出てたりしますけど、その3人が結構お気に入りで、またちょっと、あの3人を同じメンバーで組ませて、ちょっと違うものも、と思っております。
M:ありがとうございます。あともう一つだけ。私、すごく個人的に谷啓さんがすごくツボだったんですけど、何かエピソードは。
矢口:ないですよ。あれしか出てないじゃないですか。【笑】
M:なんで校長先生に谷啓さんなんですか?
矢口:空いてたからです。というかですね、僕も谷啓さん大好きなんですが、もっと普通の役だったんです。単に演説して終わっちゃうはずだったんですが、現場に来ていただいて、会ってみたら、ちょっともったいないなあと思いまして、マイクの高さが合わないというのを直前になって考えまして、ああいう、伸ばしたり縮めたりというのをやってもらったぐらいで、シーン数が実際少なかったんで、もう少し遊びたかったんですが。次はぜひ一緒に組んで暴れてもらいたいと思います。
M:ありがとうございました。
 
荒木:どうぞ、伝えたいことがある方。そこのじゃあ、二人前の女性に。
N(女性):こんにちは。
矢口:こんにちは。
N:矢口監督の大ファンなんですけど、なんかで読んだんですけど、鈴木君がイルカに人工呼吸したのは作り物って聞いたんですけど、矢口監督のお気に入りでうちに持ち帰ったって聞いたんですけど、本当なんですか?
矢口:いやぁ、違います。…あれ、作り物に見えますかぁ?
N:見えなかったんで、すごい驚いたんですよぉ。
矢口:あれ、作り物ですよ。【笑】ええ、うちに、います。
N:ええ?なんか、飾ったりとか、抱いたりとか、してるんですか?
矢口:いや、あの、現場で見たときは本当によくできていたので、とてもいとおしくなって持って帰ったんですが、もう、じゃまでじゃまで。【笑】スペースを取るので縦に置いてあるんですが、通るときに背びれがひざに当たるので、今、テニスボールをスパっと切って、背びれに刺して、鎮座ましましてございます。
N:そうなんですか。なんか、私も欲しいななんて思っちゃったんですけど。
矢口:はあ。
N:あ、どうもありがとうございました。おもしろかったです、すごく。
 
荒木:はい、えー、あの上の方にいらっしゃる女性。
O(女性):どうも、こんばんは。監督の大学の後輩の者なんですが。
荒木:あ、そうですか。造形大学。
O:はい。以前、『ひみつの花園』の図書館で撮影したときに見学させていただいたりとかしたんですが。
矢口:ご苦労様です。
O:いえ、ありがとうございます。私、その…、結局、大学4年間ずっと映画をやっていまして、そのあとCM製作会社に入ろうということになっていたんですが。でも映画をやりたいと思っていたんですが、結局、ちょっと大ケガをしまして、そういうのが全部なくなりまして、今も通院生活を続けているんですが…。
矢口:何を、どうしたんですか?【笑】
O:学園祭があるじゃないですか。その時に喧嘩御輿にぶつかって、後頭部を。
矢口:後頭部ですか?足とかじゃなくて。
O:はい、丸太が後頭部に当たって、脳震盪を起こして骨がずれたりとかいろいろありまして。
矢口:…あー。聞かなきゃよかった。はい。
O:それで、いまあんまりアクティブに動けない状態なんですけれども、で、密かにネタを書いたりとかしてるんですが、そんな状態で、何か他に、たとえば監督が普段からおもしろい映画を作るためにこっそりがんばっていることとか、そういうのはありますでしょうか?
矢口:それを参考にできればということですか?
O:はい。
矢口:全然がんばってないですね。でも、こっそりしていることはあります。それは観察ですかね、人の。それは映画のネタにしようとかどうとかじゃなくて、好きでやっちゃうんですけど、満員電車の中とかで、たとえばカップルが何かしゃべっているとか、喫茶店で向かいの人たちが何かしゃべっているとか、道端で喧嘩をしている人とかいると、何かじっと見つめてしまうんですね。おもしろくてね。そういうのがどんどんどんどん積み重なっていくと、そういうのが気がつくと『ONE PIECE』のネタになっていたりするんですけれども。…『ONE PIECE』ってご覧になったことありますか?
O:はい、観ました。
矢口:ああいう形になっていったりします。まあ、一本の映画を作るときには、キャラクターの造形とかにそういうのを、ストックしておくというほど記憶してはいないんですけど、多分滲み出てきてしまって、そういうキャラクターに浸透しているとは思いますが。これといった努力みたいなことはないですね。
O:はい。
矢口:一生懸命やるとなんか疲れちゃって、作品も何か堅苦しくなってしまうことがあるので、なるべく楽に作っています。
O:はい。
矢口:だめですか?【笑】
O:ありがとうございます。
矢口:はい。
 
 
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製作 フジテレビジョン・アルタミラピクチャーズ・東宝・電通
監督/脚本 矢口史靖

(C)2001フジテレビジョン/アルタミラピクチャーズ/東宝/電通